いつも飲みに行くお店で、彼と知り合った。
彼は左手の薬指に指輪をしていたので、既婚者というのはわかっていた。
スーツ姿がおしゃれで、持っているものもブランド品が多かった。
何回かそのお店で会ううちに仲良くなり、飲んで酔っ払っているのもあったのか、あるとき、彼にキスされて、私たちの関係は始まった。
私は、彼が既婚者なのだから本気になってはいけないと思っていたはずなのに・・・。
(注)この記事は当サイトにお寄せいただいた体験談を一部編集してご紹介しています。
彼が帰っていく寂しさ
彼は、会社帰りに私の一人暮らしの家に遊びにくるようになり、半同棲みたいな状態になっていた。
でも、夜はどんなに遅くても、奥様のいる家に帰っていった。
私は、彼が帰った後のひとりぼっちの時間がたまらなく寂しかった。
彼との付き合いが続いていくうちに、私は本気で彼のことを愛し、いつか一緒になりたいと思っていた。
でも、彼には奥さんも子どももいる。毎晩いそいそと帰っていく彼の後ろ姿が現実を物語っていた。
彼は「妻にはもう気持ちはない、いつか離婚するから待っていてくれ」と決め台詞を私に言っていた。
私は半分冗談、半分本気でそういう風に思っていた。
ハッキリさせたかった私がとった行動
十分に気をつけていたはずなのに、私は彼の子供を妊娠をしてしまった。
彼に言うべきか、言わないべきか迷った。
言ってしまったら彼はどういう反応をするのか、怖くて仕方がなかった。
二週間以上悩んだ末に、妊娠したと・・・彼に告白をした。
その時の彼の顔は、驚きのなかに困惑が混ざりこんでいるようだった。そしてしだいにその表情のなかから驚きだけが削ぎ落ちていき、あとに残った疲れきったような顔は、それまでの彼のなかに一度も見たことのない表情だった。
私はその顔を眺めていて、妊娠を告げたことを、ゆっくり後悔しはじめていた。
そして私の顔をのぞきこみ、彼はゆっくりと言葉を選びながら「申し訳ない、中絶してくれないか。」とつぶやくように言った。
そのとき、すでに私は34歳で、この先妊娠するかどうかもわからない状況だった。
「中絶はしたくない!産みたい!」と彼に宣言をしていた。
彼は何度も何度も私に謝っていた。
私は彼に謝って欲しくて妊娠したことを告げたわけではなかった。
まして償いを求めて妊娠したわけでもない。
愛している相手の子どもを産めないなんて・・・。
私はどんどん精神的に自分自身を追い詰めていき、すこし普通ではなくなっていった。
そして、やってはいけないことをする・・・。
彼の奥様と接触してしまったのだ。
そして、「私、彼の子どもを妊娠したので、彼と離婚をしてください。」とお願いをしたのだ。
キラキラしていた彼がボロ布のように・・・
奥様からは、もちろん反論が来ると思っていた。
ところが、奥様は、「いいですよ、夫とは離婚をします。但し慰謝料は請求させていただきます。」とあっさりとした返事で、私はびっくりしてしまった。
私は一応、某企業の総合職だったので、慰謝料を払うことは想定していたので許容範囲だった。
そして喜んで彼女の提案を受け入れたのだ。
でも、本当のことが後からいろいろとわかってきたのである。
彼の家も車も全て奥様名義、彼の実家の自営業には奥様の金銭的な援助が少なくなかった。
奥様のご実家は資産家で、彼は逆玉の輿結婚だったようだった。
彼は奥様にあっさりと追い出され、残ったのは借金の返済だ。
奥様からの慰謝料と実家に援助してもらった金額も返済していかなくてはならなかった。
私は彼との子どもができたから、彼と入籍をした。
しかし、知り合ったときのおしゃれな彼はもういなかった。
私が恋したおしゃれな彼は、すべて奥様のお金で成り立っていた。
奥様のセンスで選んだスーツ、奥様の払うお金で買い揃えた品のいい小物に、バカな私はうっとりしていたのだった。
彼は仕事も奥様のお父様の会社に勤めていたので、そこも解雇になり、今は倉庫作業のアルバイトをしている。
彼の稼いでくるアルバイト代は借金返済で消えてしまう。
だから、私の給料がメインで暮らしていかなくてはならないが、それももうすぐ産休に入る。
大好きな彼と一緒になれたが、不倫の代償が大きすぎる。
愛だけでは暮らしていけないという現実、この先どうなるのだろう。
子どもが生まれてからの生活が不安で仕方がない。