残業のたびに私を拒んだ妻の秘密。

妻と初めて会ったのは、取引先に宣材を届けにゆき、新入社員として紹介された時だった。

いかにも初々しく見え、「よろしくお願いします」と頭を下げた様子もぎこちなかった。
可愛い女の子が入った、と私は彼女の事を記憶に留めた。

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仕事でそこを訪れるたびに話を交わすようになり、出会いから一ヶ月ほどで付き合いが始まった。

彼女よりも私の方が熱を上げ、数回デートをしただけで、もう「結婚しよう」と口に出していた。
一緒にいないと気持が鬱屈してきて、何も手に付かない。

実家にいる彼女は親の干渉が厳しく、同棲は許されなかったから、一緒に暮らすには結婚するしか方法がなかった。

(注)この記事は当サイトにお寄せいただいた体験談を一部編集してご紹介しています。
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新しい生活

性急なプロポーズに彼女は少し戸惑ったようだが、すぐその場で承諾してくれた。

結婚式とカナダへの新婚旅行を終え、彼女との共同生活が始まった。
妻は今までの勤めを続けることになったので、朝食後は一緒に新しいマンションの部屋を出る。

私は妻の勤め先の担当を外れたため、昼間は顔を合わせない。
夜になって私が部屋に戻ると、先に帰宅した妻が夕食を作って待っている。

平日の生活はそんな風で、一年ほどは世間並みの新婚カップル同様、絶えずお互いの顔を見合っては幸せな気分に浸っていた。

あるいは、完全に幸せな気分でいたのは、私だけだったかもしれない。ほころびが見え始めたのは、結婚から一年ほど経った頃だった。

ほころび

急に妻の帰宅が遅い日が増え、二人の生活のリズムが乱れだした。

最初は私も何も言わなかった。
新入社員だった妻も仕事に慣れ、色々と任されることも多くなったのだろう。
その残業で帰れないのだと思っていた。

おかしいと感じ始めたのは、夜の営みがきっかけだった。
帰宅が遅れた夜、妻は必ず私の誘いを拒む――。その事実に、突然気づいたのだ。

妻は付き合い始めた時から性的に蕾の開いた状態で、愛撫への反応も悪くなく、むしろ積極性を示すほどだった。
今では十分に味を知って、自ら求めることも多かった。

しかし、それがまるで煩わしいといった様子で、私の顔を避けて横を向いてしまう。
それが残業の時に限って何回も続く。……鈍感な私も、さすがに不審感を募らせずにはいられなかった。

残業を終えた彼女

その日も妻は残業で遅くなり、私の方は帰宅後、わざと早くベッドに入っていた。
うとうとしかけた頃、妻が帰ってくる気配がした。

妻はシャワーを浴び、少し居間でグズグズしていた後、やがて私の寝ているベッドに潜り込んできた。

私は手を伸ばし、妻の肩をつかんだ。妻は、案の定、
「寝かせて」
と誘いを拒んだ。

私はもう我慢ができなくなった。ベッドから出ると、反対側に回り込み、
「どうしたんだ一体!」
と寝ている妻に怒鳴った。抑圧された気持が一気に噴出する感じだった。

「君は残業した夜に限って僕の誘いをいやがる。このところずっとだ。
一体どうしてだ?疲れてるのは分かる。セックスさえいやだという時もあるだろう。でも必ず拒否するっていうのはおかしい。どういうことなんだ」
私は一気にまくし立てた。

妻はしばらく身動きもしなかった。
私の激怒にもかかわらず、寝入ってしまったのかと思ったほどだ。

やがて、妻の肩が震えだした。
その震えは見る見るうちに頭や腹、下肢にも伝わった。……妻は泣いているのだ。

私は自分の怒りも冷め、妻の体の脇に腰を下ろした。
「……どうしたんだ一体?」

妻の打算

私は先程の言葉を静かな口調で繰り返した。
――その後、涙を流しながら妻は告白した。
やはり残業というのは嘘で、彼女は男と会っていたのだった。

その男は私の前から妻の会社に出入りしていた取引先の人間で、初めて紹介された時から、彼女の方で好意を持っていた。

余りにその気持が強くなったので、自分から告白しようかと思ったくらいだが、その男には奥さんがいた。
好きになったとはいえ、不倫の関係を持つ事は抵抗を覚える。
行き場のない恋愛感情を持て余す毎日だった。

そこに現れたのが、彼女に好意を持った私だった。
誘われるままにデート、そしてプロポーズされ、妻は承諾した。
私への恋愛感情ももちろんあったが、これで男のことを忘れられるという、一種の打算も働いていたという。

忌まわしい誘惑の言葉

自分の新婚生活も順調で、運良くその男もしばらく会社に顔を見せなかった。
もうこれで思いきれたと安心していたところへ、男が久しぶりに妻の会社へ営業のために現れた。

「僕、離婚したんですよ」
と、男は世間話のあと、部長に言った。
妻にとっては、それが忌まわしい誘惑の言葉になった。

男と接するうち、妻のかつての恋愛感情が再び燃え上がった。
その男も、結婚して性的に成熟した妻に惹かれるものがあったのだろう。以前よりずっと親しげに話をしてくる。

――二人が関係を持つのに時間はかからなかった。
「じゃあ、帰宅が遅くなるときはいつもそいつと会っていたのか?」
私が聞くと、妻は頷いた。帰ってきても私の誘いを拒むのは、男の痕跡を私に発見されたくないからだった。

告白のあと

妻の告白のあと、私はしばらくネットカフェで寝泊まりした。
携帯に妻からの電話やメールが来ても無視する状態が続いた。

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部屋に戻ったのは、二週間ほど経ってからだった。
妻は私を迎え、泣きながら土下座をした。それを見ていると、私の方が情けなくなった。

あの夜から、妻は男と会っていない。
少なくとも、彼女の申告ではそうだった。

私自身が完全に信じきれるわけではない。
しかし、妻への感情は強く、別れへも踏み切れない。

――妻の告白から、もう三年が経っている。


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