その2の続きです
私:「S君は優しいよ。A子はS君の気持ち、きっと分かってくれてるから大丈夫・・・」
S君:「Y美ちゃん・・・俺、本当は今の話し誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。」
私:「いいよ。私が聞いてあげるから。」
S君:「Y美ちゃん・・・」
高まる鼓動
私は知らないうちに胸の鼓動が大きくなっているのに気が付きました。
まだアルコールが抜けきっていないせいなのか、それとも・・・・。
私はその先を考えるのが怖くなりましたが、今自分が触れている確かな温もりに心が癒されているような感覚がありました。
S君:「・・・Y美ちゃんに話してみてよかった。なんか、すげえ落ち着く・・。俺、実はY美ちゃんのこと、ちょっと気になってたんだ・・・A子と気が合うけど、なんか雰囲気が違うというか、一緒にいて安心するっていうか・・・結婚しているのに、おかしいよね。」
S君の衝撃的な告白に、私は一瞬何を言われたのか分かりませんでした。
私:「S君、あの・・・・」
そう言いかけた瞬間、何も言わずにS君が唇を重ねてきました。私は頭の中が真っ白になり、体中の力が抜けていくような感覚に陥りました。
S君:「今日だけ・・・一緒にいてくれないかな・・・?」
S君はそう言うと、再び唇を重ねてきました。
私は自分でも驚くほど素直にそれを受け入れていました。
求め合う二人
そしてどちらが何を言うわけでもなく、ただ、その場を離れ、同じ階の女子トイレの個室に入りました。
そして、まるで枷が外れたかのように、お互いを求めあいました。
私自身、自分が感じていた以上に欲求不満になっていたようでした。
力強く、そしてどこか切なさを帯びた彼の愛撫は、主人のそれとは全く違う刺激を私に与えてくれました。
私たちは、お互いに一線を越えてしまった罪悪感を掻き消すかのように本能に身を任せていました。
S君:「・・・Y美ちゃん、ごめんね。こんなこと・・・許されないよね。」
私:「ううん・・・S君の気持ち、嬉しかったよ・・・でも、今日のことは、二人だけの秘密だからね。」
私たちは何も言わないままそれぞれの部屋に戻りました。
ベッドに入った私は、隣で眠っている主人の姿を見て、さっき起きたことが夢ではないことをはっきりと感じました。
その直後、主人とA子に対して、一生大きな十字架を背負っていかなくていけない恐怖と罪悪感に体中の震えが止まらず、心臓が押しつぶされそうになりながら、ひたすら朝を待っていました。
二人だけの秘密
翌朝、私はできる限りの「普段通り」で主人に声をかけました。朝食はまた4人で一緒に食べました。食事中、私とS君はほとんど顔を合わせませんでした。
ホテルを出て、その日は美術館や動物園を見て回りました。
4人で一緒に見て回りましたが、私は終始主人の傍から離れませんでした。S君もずっとA子の傍にいました。
帰りの車の中、A子がいろいろ話しかけてくれましたが、正直頭の中に入ってきませんでした。
早くこの旅行を終わりにしたい、そのことだけ考えていました。
ようやく、A子たちのアパートについたのは、もう日が暮れた頃でした。
帰りが遅くなるからと、あまり長話はせずに、私たちは解散しました。
あの旅行から半年が経ちましたが、あの日以来S君とは特別何もありませんでした。
A子もやっと子供を授かり、一緒に喜んでいるS君を見ていると、あの日のことが、夢だったのかなと思ってしまうこともあります。
もしかしたら、あの日S君も精神的に追い詰められていて、正気を失っていただけだったのかもしれません。
でも今でも夜ベッドに入ると、あの日のことを思い出し、胸が苦しくなります。
でも、これはきっとS君も同じだと思います。私たちはあの日、こうなることを覚悟していたはずですから・・・。
私たち4人は、今でも変わらず仲良しです。もちろん、A子ともずっと親友です。