前話の続き
主人:「いや~露天風呂ホントよかった!俺 気持ち良すぎて歌いそうになったもん」
私「:やめてよ、恥ずかしいから!でも私も男湯すぐ隣だったからT(主人の名前)のこと呼ぼうかと思っちゃった」
主人:「それこそ恥ずかしいだろ!」
そのとき、主人の携帯から着信音が流れてきました。
主人:「もしもし?・・・うん・・うん、わかった。じゃああとでね~・・・これから夕食だから1階の会場で待ち合わせだってさ!」
電話の主はS君でした。気が付くと、時計は18時を過ぎていました。
4人での夕食
夕飯の会場は浴場の近くなので、またエレベーターで向かいます。
1Fに着き会場に向かうと、夕飯の時間のせいか、他のお客さんでかなり混み合っていました。
主人:「すごい人だな・・・あ!いたいた、あそこ!」
主人が指さした先には、既にテーブルに座って場所を確保してくれているA子とS君がこっちに向かって手を振っていました。
急いで席に向かう私たち。
私:「人がいっぱいでびっくりだよ!だいぶ待たせちゃったかな・・・?」
A子:「私たちもさっききたところだから大丈夫だよ!・・・それよりごめんね、一緒にお風呂いけなくて・・・」
私:「気にしなくていいよ!体調は大丈夫なの?」
A子:「うん!部屋で休んでたからもう良くなったよ。てか二人とも浴衣似合ってるね!私たちも浴衣でくればよかったね~」
私:「浴衣着てるだけで雰囲気出るよね!でもこれサイズ大きくてちょっと歩きにくいんだ。」
主人:「俺はちょうどいいサイズだよ。もう一つ上のサイズでもたぶん着れたと思うな」
S君:「まじで?俺身長でかいから着られるのあるかな・・」
A子:「オーダーメイドにしてもらえば??」
S君:「いいね~!・・・て、出来上がるのいつだよ!明日帰るし!」
私:「確かに~!今着なきゃ意味ないしね。 ねえねえ、それより何食べる?お腹すいちゃった・・・」
私たちは、近くで採れた新鮮な食材や和牛を使った料理に舌鼓を打ちました。
お酒の力もあり、時間を忘れて、話に夢中になっていました。気付いた頃には会場に来てから3時間近く経っていました。
ふたりきりの夜
S君「そろそろ戻ろうか?」
S君の一言を合図に、みんな携帯で時間を確認しました。
そしてだいぶ重くなった腰を上げて、4人で会場を後にし、エレベーターに乗りました。
私:「じゃあまた明日、おやすみ~!」
A子&S君「:おやすみ~!」
2階でA子たちは先に降り、私たちは3階の部屋に向かいました。
部屋について30分ほどテレビを見ていましたが、ふと横を見ると、ベッドに横になってテレビを見ていた主人がいつの間にか眠っていました。
私:「え~!せっかく二人きりになれたのに・・・あり得ない。」
正直、子供の世話と家事に追われていて、久しく夜の方が寂しかった私は、今日の旅行にちょっと期待をしていました。
しかし目の前の現実を見せつけられた私はあまりのショックに主人を叩き起こそうとも思いましたが、今の気分じゃとても出来るような状態ではなかったので、気分転換をしようと、もう一度露天風呂に行こうと思いました。
主人を起こさないようにそっと部屋を出て、エレベーターに向かいました。
1Fに着き浴場に入ろうとしたとき、横に置いてあるマッサージチェアにS君の姿がありました。
私:「やっほー。もしかしてA子待ち?露天風呂気持ちよかったからなかなか出てこないかもよ~」
S君:「いや、俺一人だよ。」
私:「え?A子も一緒じゃないの?」
S君:「なんか気分が乗らないからって先に寝ちゃったよ。仕方ないから俺だけ入りにきたんだよ。」
私:「そうなのだ・・・A子今日調子悪かった?夕食のときはわかんなかったけど・・・何かあったの?」
S君:「・・・」
私:「・・・?」
S君:「・・・話していいのかな・・」
私:「・・・え?」
それからS君は、A子のことを話し始めました。
私に子供が出来てから、A子が焦っていたこと、この旅行を利用して子供が授かりたいと思っていること。ところがちょうど今回の旅行が生理日と重なってしまった為、だいぶ落ち込んでいること・・。
私はS君の話を聞いていて言葉が出ませんでした。
A子は私の為に今回のことをいろいろ計画してくれたのに、私はA子のことを何もわかってあげられていなかった。
A子に対してなんだか申し訳ないという気持ちがあふれてきました。
S君:「俺・・・あいつに何もできなかった。一人で部屋出てきちゃったけど、戻ってなんて声かけてあげればいいのか・・・」
そう呟いたS君の目にはうっすらと涙が浮かんでいました。
S君と出会って初めて見た涙でした。
その瞬間、A子の気持ちとそれに真正面から向かおうとするS君の姿にいろいろが気持ちが交差し、たまらない気持ちになりました。
そして無意識に、S君の顔を抱きよせていました。
その3に続く