私には、とても付き合いの長い彼がいました。
お互いに結婚前からの付き合いで、これまで何度も「けじめ」をつけようと別れました。
しかし三ヶ月もしないうちに、どちらからともなく連絡をしてしまい、再び付き合うことになっていました。
これはダブル不倫を終わらせた、つらい別れの話です。
ちょうど彼に子供が生まれる頃、奥さんが実家に帰っていて、彼が独りだと聞いたので、近くの温泉に一泊だけの小旅行に出かけました。
私は主人に怪しまれないように、前もって独身の友人をその旅行に誘いました。
彼女(友人)は私たちの付き合いを知っているので、何も言わずに応じてくれました。
女二人男一人の温泉旅行、彼とは現地で落ち合いました。
二人きりでないとは言え、彼と旅行に出るなんて夢のようでした。
(注)この記事は当サイトにお寄せいただいた体験談を一部編集してご紹介しています。
突然の辛い別れ
温泉宿に着くと友人には悪いと思いつつ、少しのあいだ別行動にしてもらいます、私は彼の部屋を訪ねました。
そうして、夕飯まで散歩にと広い庭を二人で手をつないで歩きました。
日常を離れた、音のない時間、ゆっくりと眺める景色に、心が洗われるようでした。
しばらく黙って歩いていると、彼が言いにくそうに口を開きました。
「オレたち、もう、いい加減にしないとな」
ああ、別れ話のためにここに来たのか・・・。
私は、瞬間的に彼との別れを覚悟しました。
私は「もう十年になるかな?」視線のはしに彼をおきながら聞きました。
「そうだね」と彼が返します。
これが最後の時間。
そう思うと涙が滲んで来ます。
子供が産まれたら、「奥さんと子供のそばにいたい」と言う彼の気持ちが痛いほど分かりました。
好きなまま別れなければ
私も不妊治療が上手くいって、子供が出来れば変われるのかなと思いました。
しかし、いつも医師に投げかけられる言葉は「子供は望めない」と言われているのと大差なく、私はほとんど諦めていました。
彼を無理に引きとめることも出来ません。
いつも奥さんのところへ返さなくてはと覚悟していたのです。
私は、どうしてずっと彼が好きなままなんだろう。
「どうした」と聞く彼に、
私は「戻ろう」と言って一人来た方向に歩き出しました。
私を追って来る彼に言いました。
「本当にもう会わないね」
彼は「そうしよう」と一言。
不倫は、お互いに好きなままなのに別れなくてはいけないから、よけいに辛いです。
彼の幸せ
泣くのを我慢して部屋に戻ると、きっと私はヘンな顔をしていたんでしょう、
なにかを察知したのか、友人が早く食事にしようと、ことさら明るく言ってくれました。
この子がいてくれて良かったな。
その晩は二人で遊びまくって次の日のお昼頃に帰りました。
それから、彼には本当に会っていません。
共通の友人から彼に女の子が生まれたと聞きました。
他の友だちと連名でお祝いを送りました。
今は彼が幸せでいればいいと思っています。