彼女ではなく家政婦に成り下がっていた私。

当時、私は24歳のアルバイト、相手は32歳で他の店舗のコーヒーショップの店長でした。
彼はバツイチで一人暮らし。

店長という事で朝から晩まで働いていたので私は自分の仕事が終わると彼の家まで行って洗濯や掃除をして、夕食の支度をして帰るという「通い妻」状態でした。

彼の家までは職場からは近かったのですが、彼の家から私の家までは公共機関を使って約2時間半。
彼の家までの交通費も馬鹿にならなかったのですが彼のためと思って頑張っていました。

寂しがり屋の彼は、自分の仕事が終わると決まって私にメールを送ってきました。
だいたいそれが夜11時くらい。そこからメールのやり取りが始まり、だいたい午前0時まで続きました。
「おやすみ」と私からメールすると「俺とのメールを勝手に切った」と言って怒るので、仕方なしに毎晩メールに付き合っていました。

休みが合う日の前日は私が彼の家に泊まって過ごしていました。
(注)この記事は当サイトにお寄せいただいた体験談を一部編集してご紹介しています。

しだいに少なくなっていった彼からのメール

同棲をしなかった理由は、自分の時間が欲しいと私が思っていたからで、寂しがり屋の彼と一緒に住むと束縛されるような気がしてなりませんでした。
そんな毎日でしたが、あるとき、夜中からの彼のメールが来るには来るけれども前ほど遅くまでのやりとりが無くなりました。

「忙しい」という理由でしたが、なんとなくメールの内容もそっけないように思っていました。
そんな時、彼が店舗を変わるので、通勤時間が長くなるという話がありました。

今までの通勤時間は30分でしたが、新たな店舗は1時間30分かかるところで、引継ぎなどもあるから今まで以上に遅くなるかもという内容でした。
店舗が変わってから、ますますメールの回数も減り、私は自分の時間が取れるようになりました。
あるとき、彼のお店に遊びに行ってみました。

時間はかなり遠かったのですが、サプライズと思って何も言わずに行ってみました。
お客さんは数名いて、少し遠くから様子を見ていると、カウンターの中で女性店員と親しそうにしている彼が見えました。

職場仲間というより、明らかにそれ以上に仲がいい印象で、少し嫌な予感がしつつ私はお店に入りました。
彼はあっけにとられた顔をして、

どうしたの?
なんで来たの?

「来てみただけ」
と私は答えて、彼が作業をするカウンターにわざと座りました。

親しげな女性は、彼にくっついたりしていましたが、私を気にして、彼は彼女を避けるようにしていました。
明らかにこれはその人と浮気をしていると確信しました。

ただし、その日は黙って帰りました。
それからも、通い妻として努めました。通い妻である以上、私は浮気相手よりも上の立場にあると思っていたからです。
ところが、そんな私の努力も空しく、決定的な事件が起こります。

急に連絡が取れなくなった夜

合鍵
それは、私が連休をもらったので数日間彼の家に泊まるという3日間の出来事です。
初日、彼は自分の歓迎会があるから遅くなると前から言っていました。

私はそれでもかまわないから家で待っていました。
終電の時間をチェックし、待っていましたが、一向に帰ってくる気配がありません。
メールを送っても返事は無し。電話をしても出ません。

私は浮気されているという事より、もしかしたら、酔って道路で寝てしまっているのではないか?それとも事故にでも遭ったのではないかととても心配しました。

一晩中寝ることも出来ず、とにかく電話とメールを繰り返しました。
事故かなんかであれば電話が鳴れば誰かが出るかもしれないと思いました。

連絡が一度も取ることが出来ず、一睡も出来ないまま朝になってしまい、ウトウトしかかっていた時に、彼から電話がかかってきました。

何回も電話どうしたの?

その言葉に怒りは覚えず、とにかく無事だったことが何よりうれしかったです。
どうしていたのか聞くと、酔ってホテルに泊まってしまった。
連絡が出来ずに申し訳ない。

今日は早番だから20時には帰れるからそしたらまた話す。と言われ、電話を切りました。

早く帰ってくるのであればと、お部屋もピカピカに掃除し、お夕飯も豪華なものにしました。
しかし…彼は20時になっても帰ってきません。

結局帰ってきたのは午前0時。
その時は、もう、怒りしかありませんでした。
でも、その怒りをそのままぶつけてはいけないと思い、彼の言い訳を最後まで聞こうと思いました。

彼の言い訳

彼の言い訳はこうです。

終電で帰ろうとして立ち上がったが、酔って足元がふらついて歩けなかった。もうそこから記憶がない。

みんなに助けられながら駅までは行けたが、自分と同じ方向の人間が居なかったため、女性スタッフが心配してホテルまで連れて行ってくれた。

ビジネスホテルはいっぱいだったのでラブホしか空いていなかったが、彼女は自分を置いてすぐに帰宅したので自分とは関係ない。
何もなかった。
浮気など一切していない。
本当に笑ってしまうような内容の言い訳でした。

記憶がないのに、どうして覚えているの?
あ、ほんとだー覚えてるー

もう返す言葉もありませんでしたが、浮気をしていないという言い訳をするという事は私を大事にしたいのだろうと前向きにとらえてその時は許しました。
ただ、もう二度と同じことをしないこと。

そして、帰りは20時までに帰ってくること。という条件を突きつけました。
20時にお店が閉まるのに、午前0時に帰宅はあまりにもおかしいのです。

引継ぎをしているという事でしたが、チェーン店でそんなに引継ぎすることなどあまりないと思ったからです。
それでも、毎日彼は終電で帰ってきました。

きっとお店の閉店後に彼女とイチャイチャしていたのでしょう…。
悔しい気持ちと、自分が情けない気持ちと、彼への怒りとで、私は情緒不安定になっていました。

いきなり大きな声を出してしまったり、物に当たってしまったりと、明らかに自分がおかしいのがわかりました。
どうしたらいいかと考えて、彼からしばらく離れようと思いました。
自分のために。

そう思った日から私は、自分が休みの日の前日だけ彼の家に行こうと決めました。
それは彼に何も言わずに勝手にしました。それから、徐々に行く日を減らしました。

自分の気持ちは彼にあります。ですが、彼は私を大事にしてくれない。だったら私も彼を大事にするのは止めようと。

一度、離れてみると、友達と遊ぶ時間が増え、仕事の帰りも友達とお茶をして帰ることも出来ます。
それがいいストレス発散になったのか私は自分を取り戻しました。

「さよなら」もメールで


彼は、それから3か月後に大阪に転勤になりました。その報告を受け、私は最後の話し合いをしに行こうと彼の家をたずねました。
引っ越しの用意をしているようで、彼の母親が手伝いに来ていました。

私の荷物は捨てられていましたが、それを捨てたのは母親で、それを捨てる時に彼は「それは捨てたらダメなんだ」と言っていたと聞きました。
その言葉を聞いて、私は泣きました。なんでか理由はわかりません。

引っ越しの当日、彼からメールが来ました。

色々ありがとう。悲しませてごめんね

私はそれに返事をすることはありませんでしたが、母親からは「彼の恋人と一緒に大阪に行く」と聞いていたので「浮気相手とうまくいったんだ」と思いました。

それから半年後…
いきなり彼からメール。

来月からまた東京で仕事するからよろしくね

よくも「しゃぁしゃぁとメールしてこれたな」と思い、私も返信しました。

私:なにが「よろしくね」なの?
彼:いや掃除とか洗濯とか・・・

このとき初めて私は、彼にとっての「家政婦」だったことに気付いたのです。
自分がアホだったとは思いますが、あまりの屈辱に私は、ただただ情けなくて涙も出ませんでした。

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