出張と称して不倫相手と会っている主人と、私の妻としてのプライド。

私は義父がきっかけで主人と知り合いました。
義父は私が社会人枠で入った大学の講師の一人でした。
義妹は既に結婚し家庭を構えていて、ひとり息子である主人の身を案じていた義父が、私の他にも何人かの女性に引き合わせていたことは知っていました。
主人は絵に描いたような草食系男子で、ちょっと俳優の内野聖陽に似た、見た目がハンサムな感じでした。
いつもニコニコ笑っている感じで、女性関係はあまりないような雰囲気でした。

私は当時32歳、主人は35歳でした。
facebookで仲良くなり、LINEで連絡を取り合う程度でしたが、関西に転勤中の彼が東京に帰ってくるたびに何となく会うようになりました。

いるはずのない主人が品川駅に!

私は結局、仕事が忙しくなり大学は辞めましたので、義父とのつながりは一時途絶えました。
しかし主人とは月一回、会うか会わないかのリズムが心地良くて、漠然と「この人と縁があるのかな~」と思い始めていました。
普段は地味な生活なんですが、「たまには美味しいものを食べに行きたい」という波長が彼と合っていたと思います。
そんな生活が1年ほど続き、彼からプロポーズを受けて結婚しました。
結婚の段取りから気づいていたのですが、主人は周りの意見をそのまま受け入れる人でした。
私個人は結婚式は出来れば控えめにしたかったのですが、義父の思うがままの派手な披露宴でした。
私が結婚できたのは義父のおかげでしたが、私たちへの干渉がひどく、結婚後は朝御飯から食べにくるような人でした。
もちろん、義母と離婚しているわけでないのです。
妊娠がわかった時は「立ち会い出産は嫌」と主人にさえ拒む私に、
義父が「俺、立ち会いたい。息子の時は立ち会えなかったから。」と言い出すほどで、私も主人も引いてしまいました。
そんなワガママな父親を持った主人が、なぜいつも「ニコニコ」と笑いながら父親のことを理解して味方をするのか、私には理解ができないことでした。
それが判明したのは本当に偶然の出来事でした。

主人の出張中、女友達と久しぶりに御飯に行くことになり早めに出掛けたときのことです。
東京にはいないはずの主人が夕方の品川駅で女性と歩いていました。
二人とも嬉しそうに手を絡めながら、迷うことなく歩いて行きました。
こんな時間に、こんな場所で、誰が見ているかわからないと思うはずなのに、警戒する素振りもない二人の姿に唖然としました。
主人は帰宅して、いつものような出張話をしていました。
私は何も言わずに、いつも通り振舞いました。

出張帰りであるはずの主人のメール履歴を見たら「いつもありがとう。こんな悩みは誰にも言えないけど、◯◯のおかげです。楽しかったです。」という趣旨の文言と次回も楽しみにしているという締めくくりでした。
メールは読んだら消去としていたようで他の履歴は見当たらず、このメールも次の朝には消えていました。
主人は一回り以上も年上の女性と結婚前から不倫関係にありました。
うっぷんや悩みをそこで吐き出して、あとは八方万事穏やかに、と心掛けていたようです。
主人の浮気相手は義父と親子で通っている文壇バーのママでした。
私も主人に何度か連れて行ってもらったことがあります。
彼女は言葉数少なく、女優のような雰囲気でした。

妻としてのプライド

はるかに年上の女性関係が主人にあるとわかっても、正直「結婚生活は失いたくない、妻という座を渡したくない。」と思いました。
この一件から、主人とは仕事の話は深く聞かず、相槌を打つ程度の会話になりました。
主人は家族を大切にしているので、文句はありません。
いまでも出張で月1回泊りがけで出掛けますが、行き先は本人が言うまで決して聞くことはありません。
私は主人の下着やシャツのアイロンなど、生活面で恥ずかしい思いをさせていないとアピールするように完璧な準備で主人を送り出しています。
それが妻としての私のプライドです。