「浮気は誰にもバレなければいいんだよ」と何年も前に言われたことがあります。
その時は、まだ私にも、そういうことに罪悪感を覚えるくらいの良心がありました。
でも夫婦仲が冷えていくうちに、そんなものも薄れていたんだと思います。
一度は壊れてしまった関係ですが八年後に再会しました。
再会したその人と不倫関係になるまでに時間はかかりませんでした。
彼から逃げ出した八年前、もう好きだと気付いていたのです。
彼と会っていても会話と言えるものはなかったけれど、私にとってはそれで十分に満足でした。
(注)この記事は当サイトにお寄せいただいた体験談を一部編集してご紹介しています。
それでも惹かれる二人
彼はとても家族を大切に思っていて、時に人を平気で傷つけるような人です。
私と彼とを繋ぐものはお互いの利害のみでした。
離れても距離を置いても、また会いに行ってしまうのです。
私には彼が唯一の拠り所だったので。
結構幸せだったし、満たされていたと思います。
しかし、そんな満たされた時間は続かないのです。
彼は、ある日言いました。
病気に引き裂かれる
ずっと気になっていたことを調べに病院へ行き、検査を受けたそうです。その結果別の物が見つかってしまいました。
彼は淡々と言います。それは癌だったのですが、私は茫然としました。
彼の体調が思わしくないことは、たまにしか会わない私でさえ気づいていました。
なんとなく予測はついていたのですが、現実に彼の口から聞かされると涙が出そうでした。
彼の癌は、胃と肝臓と膵臓に散らばっていて、手の施しようがないとのこと。
「それなら、余命も出ているでしょう」と尋ねる私に、
彼は「お前には隠せんな」と私を見つめて「来年の桜が見れないらしい」と言いました。
もう一年もありません。私は声を殺して泣きました。
「泣かんでいいのに」と彼はやさしく私の背中をさすります。
いつかおとずれる彼との別れ、まさか病気で引き裂かれるとは・・・。
とても悔しい、私はまた一人になってしまうと思いました。
再びめぐりあう約束
それから、ひと月もしないうちに彼は一度抗がん剤の治療を受けると病院に行きました。
しかし、すぐに「効果がない」と言い、重ねて「家に帰るよ」と言われました。
自宅で余生を送ることで、私たちは完全に別れることになります。
会いたくても会えない現実に私は後悔をしています。
もう二度とこんなことはないだろうと思います。
一度は縁がなくて離れた彼に、八年後に再会して同じくらいの年月を過ごしました。
彼が、私に少しでも好意を持っていたのかさえ、もう知ることは出来ません。
お互いに惹かれ合う理由は解っていました。
遠い前世で出会い一緒に過ごした者同士であることを知っていましたから。
次のどの時になるかは解りませんが、再び会えたらと儚い約束をしました。
私はまた一人で、もう少し生きなければいけません。これを書きながら、思い出して泣きました。